Flatt Security 代表取締役CEOの井手です。
今回、Flatt SecurityはGMOインターネットグループから10億円の増資を受けるとともに、既存株主からグループへの株式譲渡が行われることにより、GMOインターネットグループに参画するという決断をしました。これは、Flatt Securityが最速で「外貨を稼げる1兆円企業」となるために、事業成長のスピードをこれまで以上に上げるための意思決定です。
まずはこの意思決定をするにあたって少なくとも影響を受けるステークホルダーの方々にお礼させてください。企業として全く知名度も信用もなかった頃からFlatt Securityを信じてご愛顧いただいているお客様、一人一人が各分野のプロフェッショナルとして会社の成長を成し遂げてくれたFlattmate(flatmateという同居人というワードをもじった、社内メンバーを指すワード)の皆、投資家心理と反するような株式譲渡をお願いさせていただいたにもかかわらず快諾いただいた株主の皆様など、支えていただいている皆様のおかげで今のFlatt Securityがあり、このような挑戦をすることができています。改めて感謝申し上げます。
この記事では、Flatt Securityのこれまでの歩みと、この意思決定に至った背景、そしてこれからのFlatt Securityについてお話しできればと思います。
※本記事にあわせて、以下の記事も公開しています。ぜひ合わせてご覧ください。
- CTO 米内による事業ビジョン解説記事:https://blog.flatt.tech/entry/2402_cto_message
- 執行役員・プロフェッショナルサービス事業CTO 志賀による技術組織ビジョン解説記事:https://blog.flatt.tech/entry/2402_future_of_engineering_team
- これまでのFlatt Securityの歩み
- 前事業のクローズ、Flatt Securityの創業、そして暗中模索の日々
- 5年間を振り返って
- これからのFlatt Security
- もう一度スタートアップをしようと思う
- さいごに
これまでのFlatt Securityの歩み
2017年、僕は世界で競争力を失いつつある日本経済への憂いと、幼少期の原体験から来る「ものづくり企業(TOYOTA様、任天堂様など)」への憧れから、「外貨を稼げる1兆円企業を作る」ことを人生目標に据え、株式会社Flatt Securityの前身となる株式会社Flattを創業しました。
会社を立ち上げた20歳当時の文章がこちらです。
前事業のクローズ、Flatt Securityの創業、そして暗中模索の日々
Flatt Securityは最初からサイバーセキュリティ領域の事業を行っていた訳ではなく、2017年の創業当初は別事業を行っていました。
しかし、残念ながら検証を進めていく中で起業当初の仮説があまり正しくなかったことが判明し、プロダクトやブランドを譲渡する形で前事業を2018年8月に終えました。
その後、次の事業アイデアを考えることになるわけですが、いくつかあった候補の中からサイバーセキュリティ領域に挑戦することを思い立ちました。
この領域を選んだ理由はいくつかありますが、主要なものとしては以下の2点かなと思っています。
- 1兆円企業のポテンシャルがあり、市場も変化している途上であった
- Founder Market Fitが良いと感じていた
- 自分がリスペクトしていて大好きなオタク気質の天才達と仕事をすることができる
- 周囲に才能が集まっているなど、自分にしかできない要素が一定揃っている
- (プロダクトセキュリティに関しては)開発者であった自分が一定顧客になりうるためペインを理解しやすい
当時大学で在籍していた情報系サークルであるTSGがCTF(Capture The Flagの略でハッキングコンテストのようなものです)でかなり存在感を示しており、東大総長賞を獲得するなどの実績も挙げていたことでかなり身近な領域であったことも領域選定の後押しをしました。
とはいえ自分はソフトウエア開発を経験していたものの、サイバーセキュリティに関するドメイン知識があったわけではありませんでした。そのため、TSGの後輩で、普段からその能力の高さをリスペクトしていた米内(現CTO)を誘い、彼の才能に賭けて事業を立ち上げることにしました。
米内に断られていたら別の事業を選択するぐらいの気持ちだったので、ここで米内との出会いがあったことは幸運と言わざるをえません。
倒産の危機と、目の前の顧客と向き合う日々、そしてプロフェッショナルサービスの成長
こうして2019年に社名を「Flatt Security」に変更し、サイバーセキュリティ事業を創業。たちまち売上は鰻登り。会社は順調に成長を続け…
とは当然いきませんでした。そんな甘い世界ではありません。
まずはプロダクトセキュリティに関して正しく現状と顧客の課題を理解しようということで取り組みを始めたのですが、これまで関連業務に関わった経験が全くなかったこともあり、かなり苦労しました。
また、あまり残高もない中でサイバーセキュリティ領域に参入したため、あまり余裕がなく、「あと2,3ヶ月で資金調達できなければ会社が死ぬな…」という危機的な場面もありました。Flatt Securityでは社内の全メンバーに対して常に会社の残高を公開しているため、不安な思いをさせてしまっただろうなと思いますが、メンバーは皆会社を信じてくれて離職者は全く出ませんでした。本当にいいメンバーに恵まれたなと思いました。
そのような状況の中、株主の皆様には様々な叱咤激励のお声をいただきました。会社が厳しい時期も株主の皆様に支えられることで財政的な危機を乗り切っていきました。この時、他にも様々な投資先をお持ちの株主の方々が、弊社の将来に真摯に思いを馳せ、時には厳しい言葉を使いながらも支えてくださったおかげで今の会社があります。感謝してもしきれません。
2019年から2年ほど、素晴らしいメンバーが素晴らしいメンバーを呼ぶような形で徐々に仲間が増えていきました。彼らが本気で内製開発組織に寄り添ったより良いサービス提供のあり方を考え、試行錯誤し続けていった結果、徐々にFlatt Securityの実績や信用が積み重なっていき、多くの素敵なお客様に恵まれることとなりました。
こうして振り返ってみると、自分がした仕事は初期の素晴らしいメンバーと数億円のお金を集めてきたことのみで、素敵で優秀な方々に囲まれる環境に恵まれてきたことによってFlatt Securityは成長してきたのだと強く感じます。創業当初から自分の責務を「自分より優秀な人をひたすら採用してくる」ことだと考えていましたが、思い返せばこのことはとても大切だったのだと思います。
Shisho Cloudでのチャレンジ
前項まで、Flatt Securityのセキュリティ事業創業から倒産の危機、そしてプロフェッショナルサービスの成長について触れてきました。ここまでが大まかに2019年から2022年頃までに起こった出来事です。
ここまで読んで、「おいおい、ものづくり企業リスペクトって言ってたのにものづくり全然してないじゃん」と思った方もいらっしゃると思います。
確かにここまではプロフェッショナルサービスの話を中心にしていましたが、実はその裏で創業当時からプロダクトへの挑戦は常に行っていました。特に2020年頃からプロフェッショナルサービスが飛躍的な成長を続け始めて以降は、プロフェッショナルサービスで得た顧客のリアルなインサイトを基にプロダクト開発を繰り返してきました。
しかし、数億円/年の売上をあげるところまで成長できそうなプロダクトは作れても、100億円/年の売上を超えていけると思えるようなプロダクトセキュリティ領域におけるBurning Needsを解決するプロダクトはなかなか作れていませんでした。
そんな中、この状況を打破してくれそうなプロダクトがついに生まれました。昨年8月に正式リリースされたShisho Cloudです。Shisho Cloudは、これまでの全社が一丸となった継続的なチャレンジが糧となり生み出されたサービスと言えます。Shisho Cloudに関してはこれまでと明確に違った手応えを感じており、とてもワクワクしています。
Shisho Cloudでは、プロダクトセキュリティにおいて本質的に重要な以下の3アクションをプロフェッショナルサービスと組み合わせながら提供することを目指しています。
- 顧客の資産を把握する
- リスク評価をする
- 優先順位を含む施策提案をする
今後はこれらのアクションをさらに高精度かつ自動的に行えるようにすることで、様々な企業の”プロダクトセキュリティにおけるブレイン”となり、真に「エンジニアの背中をあずかる」ことができるようになると確信しています。
また、今後の更なるチャレンジとして、グローバル市場への挑戦があります。Shisho Cloudに関しては、プロダクト検証段階の施策においてもアメリカやインド、インドネシアなど国外からの流入がとても多かったことから、海外展開に大きな可能性を感じています。
Shisho Cloudの開発チームは英語を公用語としており、海外への挑戦を前提とした組織づくりを進めています。この組織をどのように拡大していくか、そして今後どのように国外市場へ挑戦をしていくかという点もとてもチャレンジングで楽しみな要素です。
5年間を振り返って
2019年の創業から今に至るまでを振り返ってきましたが、全てが思い通りにうまくいったかというと決してそんなことはありません。ここでは、過去5年でFlatt Securityができたことと、これから向き合っていきたいことを整理してみます。
この5年でできたこと
Flatt Securityがサイバーセキュリティ事業を創業してから5年間挑戦をしてきて、以下のような点についてはとても良くできたのではないかと考えています。
- 目の前の顧客と向き合い、Flatt Securityのファンになって頂くこと
- プロフェッショナルサービス(主に脆弱性診断事業)の線形な成長
- PLを意識した経営(FY2023の上期は黒字着地)
- プロダクトを作って検証して潰すというサイクルを回すこと
- 顕在化したニーズを持つ顧客へのサービスデリバリー
- サイバーセキュリティ領域におけるプロフェッショナルの採用
これから向き合うべきこと
これまでの5年間で様々な成果を得た一方、経営者として「外貨を稼げる1兆円企業」を作るにあたって、以下のような点にこれから向き合うべきだと考えています。
- プロダクトを急成長させること
- BS資産や見えない資産である信用等を積み上げ、それらを用いてレバレッジを効かせる経営
- 潜在的なニーズを持つ顧客へのリーチ
- 上場企業経営陣レベルのスタープレイヤーの採用
これからのFlatt Security
Flatt Securityはどう変わるのか
端的にいうと、「向き合うべきこと」の一つ一つに向き合っていくために、スタートアップとして、「戦時」の大胆な戦い方に移行します。資金調達で得た資金やグループ内でのシナジーなどを用いて、会社のBSや見えない信用などの資産を雪だるま式に大きくしていきます。
具体的なアクションとして、「グループの顧客基盤を生かして、非線形な事業成長を目指す」「サービス・会社認知などへの投資をアグレッシブに行っていく」「採用と組織づくりに向けたアクションと投資を加速させる」などが挙げられるかと思います。
Flatt Securityの変わらない点
「外貨を稼げる1兆円企業を目指す」という目標
当然ここはぶれることがありません。
ものづくりをし、ものづくりをする技術者を支えるようなサービスを提供し続け、外貨を稼いでそれをメンバーに還元することで、日本経済の発展に貢献することを目指していきます。
Flatt Securityとして大切にしてきた価値観
Flatt Securityの最大の強みは「独自でFlatt Securityらしい組織文化」とそれを構成する素晴らしいメンバーです。
組織フェーズに応じて今後バリューの文言などは適宜変化していくと思いますが、過去のバリューも含めてFlatt Securityのカルチャーを形成してきた価値観のコアがぶれることはありません。
- 「倫理的であれ」
- 「設計・検証・システム化」
- 「ファクトを集め、ファクトで判断する」
- 「ギークでミーハーであれ」「自分で語れる事業をやろう」
組織成長のためにこれまで以上に採用人数が増えていくことになるため、上記のようなカルチャーを維持・発展させるための取り組みにはより一層注力する必要があります。
技術者にバリューを届ける、Flatt Securityのサービス
今年で創業5周年となり、会社として新たなチャレンジを進める節目の年となることを受け、Flatt Securityでは新たに「エンジニアの背中を預かる」というミッションを掲げることにしました。しかし、Flatt Securityの根底にある想いや提供するサービスの方向性は一貫しており、今回のファイナンスを機に変化することはありません。
「エンジニアの背中を預かる」というワードには、技術者がよりクリエイティブな作業に集中できる状態を達成するために、安心して背中を預けてもらえるような存在になりたいという想いが込められています。
もう一度スタートアップをしようと思う
2019年のセキュリティ事業創業以降、Flatt Securityは素晴らしいメンバーとお客様のおかげでプロダクトセキュリティの領域において信頼を積み上げ、一定の成長を成し遂げてきました。しかし、「外貨を稼げる1兆円企業」を人生目標を掲げている自分にとってそれはある意味ゆったりとした成長に感じており、もっと大きな勝負に出るべきだという強い気持ちがありました。
より経営のレベルを上げ、スピード感をもって事業成長するためにどうすれば良いか考えていた時にGMOインターネットグループ会長の熊谷さんとの出会いがありました。熊谷さんを取締役に迎え入れて経営のレベルを上げつつ、「改めてスタートアップをする」というくらいの強い気持ちでギアを変えて事業成長にコミットしていきます。
また、ここまで事業成長について多く語ってきましたが、事業成長はあくまでもお客様に対する提供価値の対価によるものです。大きい目標を掲げつつも、引き続き目の前のお客様に対する提供価値の向上に真摯に取り組み続け、お客様や社会全体、そして社内メンバーにより良い影響を与えられればと考えています。
加えて、GMOインターネットグループのBSを生かさせていただくだけではなく、Flatt Securityの知見を生かすことでグループに対しても良いインパクトを与えられるよう積極的にチャレンジしていきます。
自分だけでやるより皆でやった方が世の中へのインパクトが速く大きくなると信じています。より大きなチャレンジをしたい方はぜひFlattmateになりましょう!
さいごに
2023年は、高校生時代に日本の未来について語り合った同志達が25歳を超え、政界に挑戦し当選を果たしていく姿を目の当たりにしました。改めて、自分の根底にある「ビジネス(経済界)から日本を支える」という想いを燃やすことができ、多くの刺激を受けた年でした。
幼少期より恵まれた環境を与えてもらってきた人間として、社会還元をすることは最低限の使命だと思っていますし、人生限りある中で大きな挑戦を続けることで、後悔のない人生を生きていきたいものです。