企業のカルチャーをどう作り、どう組織に浸透させていくかは、様々な企業の悩みの1つとなっています。2023年6月、そのヒントとなる書籍『企業文化をデザインする』(冨田憲二著・日本実業出版社)が発売され、様々な反響を生んでいます。
同書籍の発売を記念して2023年7月12日(火)に開催された、Tebiki株式会社主催のオンラインイベント「『企業文化をデザインする』著者と考える~企業文化からひも解くエンジニア組織づくり~」では、各社の組織・カルチャーづくりの取り組みや、気をつけるべきポイントについてディスカッションが行われました。本記事では、そのイベントの模様をお届けします!
- プロフィール
- 参加各社のカルチャーを紹介
- バリューを発揮するエンジニア組織づくりを実現するためには
- エンジニア採用におけるカルチャーフィットの見極め方は?
- エンジニア評価はどのように設計している?
- 会社のバリューの見直し、理想的な頻度は?
- 失敗を通じて痛感したミドルレイヤーの重要性
- これからのエンジニア組織づくりに込める想い
- お知らせ
プロフィール
Runtrip, Inc. 取締役 冨田憲二さん(@tommygfx90)
Runtrip, Inc. 取締役。前職は創業期のSmartNewsにジョインしアプリのグロース・マーケ、広告事業立ち上げを経て組織が50名時に一人目の人事となり200名への成長を伴走。人事・企業文化の社外アドバイザーも行いつつ、2023年6月1日に『企業文化をデザインする』を出版。
▼コーポレートサイト corp.runtrip.jp
▼採用ページ tidal-breadfruit-cee.notion.site
▼個人note note.com
▼著書『企業文化をデザインする』
www.njg.co.jp
Tebiki株式会社 CTO 渋谷和暁さん
2018年にTebiki社を共同創業。技術選定から採用まで、デスクレスワーカーが抱えるすべての課題を解決するプロダクトづくりのために何でもやっています。
▼コーポレートサイト tebiki.co.jp
▼採用ページ tebiki.co.jp
▼技術ブログ
techblog.tebiki.co.jp
株式会社Flatt Security 代表取締役CEO 井手康貴(@niconegoto)
東京大学経済学部卒。在学中にメルカリ等、複数のテック系スタートアップでのエンジニア経験を経て、2017年5月にFlatt(現・Flatt Security)を執行役員・豊田と共に創業。(一社)セキュリティ・キャンプ協議会理事、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)ナショナルサイバートレーニングセンター SecHack365実行委員を務める。
▼コーポレートサイト flatt.tech
▼採用ページ recruit.flatt.tech
▼技術ブログ
blog.flatt.tech
参加各社のカルチャーを紹介
浸透させたい思考法を明示するFlatt Securityの5つのバリュー
Tebiki 渋谷さん(以下、渋谷):今回は、『企業文化をデザインする』著者の冨田さんをお招きして、各社のカルチャーやエンジニア組織についてお話させていただきます。ディスカッションを始める前に、Flatt SecurityとTebikiの概要や、ミッション・ビジョン・バリューについてそれぞれ簡単に説明させていただければと思います。Flatt Securityさんからお願いします。
Flatt Security 井手(以下、井手):Flatt Securityは、開発者のための次世代セキュリティサービスを届け、世界中のプロダクト開発を加速することを目指して事業を展開している会社です。
この30年間で、ソフトウェアを競争の源泉とする企業は増加し続けており、開発者がセキュリティに関する意思決定をする場面も増えてきています。このような状況を踏まえ、私達はソフトウェア開発の各フェーズごとに最適なセキュリティサービスを提供しています。
弊社のミッションは「セキュリティの力で信頼をつなげ、クリエイティブな社会を実現する」、ビジョンは「テクノロジーの力を最大化し、世界で愛される企業になる」です。
僕は任天堂やソニーといった「グローバルなものづくり企業」をリスペクトしており、それらの企業を目指し、また支えていきたいという思いから、この会社を起業しました。その思いをミッションとビジョンに反映させています。
ミッションについては、開発者のためのセキュリティサービスに注力している背景に通ずるものがあります。先程申し上げたとおり、開発者がセキュリティに関する意思決定に携わる場面は増えてきているのですが、僕自身、開発者には「ユーザーのための開発」に専念してほしいと考えています。弊社がセキュリティを担保することで、開発者がプロダクトの価値の最大化に集中できる環境を実現し、より良い社会の実現につなげていきたいという思いが、このミッションに込められています。
弊社のバリューは下の図に示した5つです。それぞれのフレーズについて、順番に説明させていただきます。
まず「倫理的であれ」。企業としても、僕個人としても最も重要視しているバリューです。弊社のセキュリティエンジニアには高い技術力がありますが、その技術力を悪用するとサイバー攻撃や不正利用などもできてしまいます。また、スタートアップの場合、急成長するためにグレーな方法に手を出してしまう会社もあるのではないかと思います。一人ひとりがそういった非倫理的な選択をしないよう定めたのがこのフレーズです。
組織規模の拡大や事業の変革にあわせて、これまで幾度かのバリュー改定を行ってきました。「倫理的であれ」は創業時から表現が若干変わったものの、1番目に据え続けている大切なバリューです。
「設計・検証・システム化」「欲しい未来から逆算する」「ファクトを集め、ファクトで判断する」の3つは、1年ほど前に新たに追加されたバリューです。会社で働くメンバー一人ひとりにこれらの思考法を浸透させたいという思いから、かなり具体的な内容になっています。
最後の「自分で語れる事業をやろう」は少し変わった内容かと思います。
弊社はメンバーの過半数がエンジニアで構成された、エンジニア中心の会社です。弊社はまだ30人ぐらいの規模感なので、メンバー全員が自分の関わる事業についてかなり解像度高く語ることができる状態にあります。一般的に、エンジニアの方の中には「自分は技術に集中したいから、事業について考えるのはあまり好きじゃない」という方も一定数いらっしゃるのではないかと思いますが、このようなフェーズだからこそ、自分の事業に細かく目を向けてほしいという思いを込めて設定したものです。
渋谷:弊社はFlatt Securityさんにセキュリティ診断を2回実施いただいていて、その際は診断結果がとても見やすくて驚きました。事象の再現手順が詳しく解説されていたので、弊社のエンジニアも手元で検証でき、大変助かりました。個人的にもとてもオススメなので、ご興味のある方はぜひ調べてみてください。
▼Tebikiのセキュリティに関する取り組みについてのインタビュー記事
井手:「開発者フレンドリー」なサービスであることを目指して頑張っているので、そういったところを感じていただけて大変ありがたいです。
採用・人事制度・組織設計にバリューを反映するTebiki
渋谷:続いて、Tebikiのカルチャーについて簡単にご紹介させていただきます。
下の図は『企業文化をデザインする』に出てきた図を参考に、弊社のミッション・バリューと事業の関係性を整理したものです。
弊社は「現場の未来を切り拓く」というミッションを掲げており、デスクレスワーカーの課題解決に向けた、BtoBの事業ドメインを展開しています。
この事業ドメインに対して、「ユーザーの行動が全て」「シンプルに解決する」「自分で考え自分で動く」「決めたらやり抜く」という4つのバリューを定めています。採用や人事制度、組織設計においては、この4つのバリューを特に重視して取り組んでいます。
弊社のバリューは、創業間もない頃に作りました。僕と創業者の貴山がNetflixの組織づくりに関する書籍を読んで、感銘を受けたのがきっかけで、二人で考え方を合わせながら4つのバリューにまとめ上げました。
創業当初からこの4つのバリューは変わっていません。バリューが変わるということは、企業組織のデザインが変わるということだと考えています。そのため、今後このまま続けていくかどうかは慎重に検討しなければいけないと思っています。
バリューを発揮するエンジニア組織づくりを実現するためには
「会社の中で最も影響力を持つ人たち」がカルチャー浸透の鍵に
渋谷:企業カルチャーを可視化すると、ビジョン・ミッション・バリューに分けられますが、バリューを発揮するために、エンジニアの組織体制において何を一番重視していますか?
井手:しっかり組織内に浸透して、メンバー一人ひとりの意思決定や行動につながることを一番重視しています。
バリューをエンジニア組織内に浸透させるための施策として、Slackにバリューの各フレーズを表した絵文字を用意し、バリューを体現している投稿にはリアクションできるようにしています。それらの絵文字でリアクションされた投稿は、専用のチャンネルに自動的に蓄積されるので、バリューに沿った行動が可視化されます。最もバリューに即した行動を取った人については、毎月開催している全社MTGで「バリュー体現賞」として表彰しています。
トラディショナルな会社さんだと、バリューを定期的に唱和することで定着を図る場合もあるかもしれませんが、弊社はエンジニア組織が中心となっている会社なので、そのようなやり方は好まれないのではないかと考えました。そのため、コミュニケーションツールとして日常的に使っているSlackで、気軽にバリューについてやり取りできる仕組みを作りました。
また、組織内での浸透の次に、「バリューが実情とずれないこと」も重視しています。四半期に一度開催している経営合宿で、それぞれのバリューがメンバーの意思決定やアクションに本当に繋がっているのか、経営陣全員で確認しています。浸透していないバリューがあれば、適宜見直していくようにしています。
Runtrip 冨田さん(以下、冨田):私からは、エンジニア組織にとらわれない、幅広い組織づくりの観点からお話させていただきますが、「バリューを発揮するための組織づくり」については、色々な角度から取り組みができますよね。
ミッション・ビジョン・バリューそのものが大切なのは大前提として、「会社の中で最も影響力を持っている人が、それらをいかに日々の言動の中で見せ続けていくか」が一番の鍵になります。最も影響力を持っている人は、CEOやCTOなどの経営陣に限りません。どこの会社にも、役職やスキルは関係なく「一番慕われている人」「一番ボールを拾う人」「一番信頼されている人」が絶対いると思うんですよね。会社が体現してほしいと思っているカルチャーを、そういった人たちが体現しているか、その整合性は非常に重要だと思います。
また、カルチャーをデザインする側からすると、そういった人をいかに巻き込んでいくかが、カルチャーの可視化や浸透のプロセスにおいて物凄く大事だと感じています。
カルチャーマッチが新たなギバーを生み出す
渋谷:冨田さんが著書の中で触れていたギバーが、今お話いただいた「会社の中で最も影響力を持っている人たち」に当たるのではないかと思いました。ギバーとテイカーの違いについて、改めて教えていただいてもよろしいでしょうか。
冨田:ギバー(GIVER)とテイカー(TAKER)は「GIVE&TAKE」のGIVEとTAKEにそれぞれ対応しています。全ての物を自分でTAKEしてしまう人がテイカーで、それとは逆に、自分のことは置いておいて、チームや会社のために貢献することを一番に考え実行する人がギバーです。ギバーとテイカーは会社組織においてそれぞれ1割ずつぐらいで、実際にはそのどちらでもないマッチャー(MATCHER)と呼ばれる人たちがたくさんいます。
「あの人、何でも手柄を取っていっちゃうよね」という人は、おそらく皆さんのキャリアの中でも1人か2人思いつくのではないかと思います。そのようなテイカーは、短期的には成果を出すのですが、結果的に周りのみんなのやる気を削ぎ、エネルギーを奪っていってしまうんです。テイカーがいると、中長期的にチーム全体のパワーが落ちてしまいます。
一方、チームにギバーがいると、チーム全体にエネルギーが湧いたりバランスが取れたりします。特に、リモートワーク中心の環境になってくると、メンバーへの気配りや目配りをしてくれる人はより貴重な存在だと改めて実感します。そういったように周りをサポートして、献身的に動いてくれる人がギバーです。
▼冨田さんによる、組織におけるギバーの重要性を解説した記事
note.com
渋谷:組織の中でギバーの人を見抜く方法はあるのでしょうか?
冨田:同じギバーでも、根っからのギバーの人もいれば、その会社のカルチャーからエネルギーをもらって結果的にギバーになる人もいるので、難しいところです。少しスピリチュアルな話に聞こえるかもしれませんが(笑)、元がギバーでない人でも、会社のカルチャーにフィットしていると、「自分はこの会社の価値観や、この会社が登ろうとしている山に対してすごく共感できる」と感じて、そこからエネルギーを得られるので、周りの人に与えられる心の余裕が生まれるんですよね。
妖精のように現れ、良いカルチャーを醸成する各社のギバー
渋谷:冨田さんは著書の中で「テイカーは”天才”の傾向がある」と書かれていました。Flatt Securityさんは専門職の集団なので、”天才”の方は多いのではないかと勝手ながら想像しています。
井手:専門職であっても、明確にギバーと言える人が一定いますね。弊社では、採用候補者が変なこだわりを持っていないか、学んだ技術を周りの人にも還元する姿勢があるかなど、採用段階から採用候補者の指向性を丁寧に確認するようにしています。弊社にはメンバー同士を称え合う文化がありますし、勉強会などで技術的知見をシェアし合う文化もあります。そのため、現時点ではテイカーに当たる人はあまりいないように感じています。
渋谷:Flatt Securityさんにはどのようなギバーがいらっしゃるんですか?
井手:日常的な業務の中で周りの人にGIVEすることも多いと思いますが、それ以上にカルチャー作りに貢献してくれるエンジニアが多いですね。「エンジニアが働きやすい環境を作るためには、こういう制度や仕組みがあった方が良いよ」と提案してくれて、一緒に制度・仕組み作りを進めてくれるのでありがたいです。
冨田:井手さんの話を聞いて思い出したのですが、スマートニュース時代にギバーのエンジニアがいました。全てのSlackチャンネルを手動でクローリングして、必ず会話の最後が自分の発言で終わるように発言されていました。「他の誰かの発言に対して、リアクションやレスがない状態を自分が絶対に作らせない」という強い思いから、そのようなことを日常的に実践されていたようです。誰かがスベったり、変なことを言ったりしたとしても、必ずフォローを入れていたので、彼の一言でその場が明るくなっていました。
井手:確かに、ギバーの方は妖精のように現れてきますよね。些細なことも見逃さず、困っているところにパッと駆けつけてきてくれます。
冨田:観察力が高いんでしょうね。基本的に会社や組織に対してポジティブなので、そこを細かく観察して、自分が「バランスが取れてないな」「気持ち悪いな」と思ったところを拾いに行ってくれます。会社全体を見ている経営者・人事側からするとめちゃくちゃ助かる重要な人材ですよね。
Tebikiさんにはどのようなギバーがいらっしゃいますか?
渋谷:最近、システム改善のプルリクエストを自主的に上げてくれるエンジニアがいます。弊社はスクラムで開発しているので、「スクラムのバックログに載っているものしか手を付けてはダメ」というような暗黙のルールがありましたが、そのエンジニアの行動を見て、周りのエンジニアも「こういうことをやってもいいんだ」と気づき始めて、良い空気が生まれ始めました。
冨田:御社の宝ですね!
エンジニア採用におけるカルチャーフィットの見極め方は?
渋谷:先程井手さんから採用段階でのカルチャーフィットの見極めについてお話がありましたが、エンジニア採用でのカルチャーフィットの判断について、言える範囲で結構ですのでもう少し詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。
井手:「他責思考がないか」「変なこだわりがないか」など、重視するいくつかのポイントがあるので、面接の際はそれらを踏まえた質問をして判断するようにしています。
一方、面接で見れる範囲には限界があることも感じています。そのため、最終面接の前に1day体験入社を必ず設け、一緒に業務を行う中での姿勢や態度などを見るようにしています。個人的には、1ヶ月ぐらいの期間、副業という形で入っていただき、その期間の言動から見極めるのがベストだと考えていますが、それを必須要件にしてしまうと採用ハードルがとてつもなく上がってしまうので、現実的な落とし所かなと思っています。
渋谷:弊社も体験入社を実施しています。体験入社の実施には社内のコストがかかってしまうので、ある程度の組織規模になったらやめてしまうかもしれませんが、僕らのようなスタートアップの場合、とてもコストパフォーマンスが良いように感じています。
▼CEO 貴山さんが語るTebikiの人事戦略
www.bizreach.jp
冨田さんがスマートニュースに在籍していた頃は、一気にメンバーが増えて組織が急拡大したタイミングだったのではと思いますが、当時はどのような採用を行っていましたか?
冨田:私は7人目か8人目ぐらいのメンバーとして入社し、入社当初からエンジニア採用に力を入れていました。
当時はメンバーが少なかったので、面接回数が多かったですね。組織が50名を超えた頃に私はひとり人事担当になりました。私が面接して、最後はCEOはじめとする経営陣が面接をして、でもそこでも決めきれなくて飲みに行って…という感じでした。今振り返ってみて、それが良かったのか、それとも悪かったのかはなんとも言えません。
エンジニア採用の場合は、スマートニュースのカルチャーにフィットしているエンジニアに面談や面接の対応をしてもらい、「採用候補者が自社のカルチャーにマッチするかどうか」「一緒に働きたいと思えるか」を見てもらっていました。カルチャーフィットの判断については、面接回数を増やすことで精度が高まるように感じましたが、お二人も仰っていたとおり、面接を軸にした通常の採用プロセスでは見極めが難しい部分も確実にあると思います。
▼冨田さんによるカルチャーフィットの重要性についての解説記事
note.com
Runtripは正社員は3人のみで、その他のメンバー20人ほどは全員副業かフリーランスです。慎重にやるのであれば、副業転職が絶対的な正解ですよね。ただ、それだけを進めていると、会社の成長スピードに対応しきれなくなると思うので、「最悪1人、2人ぐらいは失敗してもやむなし」と腹をくくりながら、会社の成長スピードに合わせて通常採用を走らせていくしかないのではないかと思っています。正直なところ、スマートニュース時代もたくさん失敗はしてきましたよ(笑)。採用で失敗しない会社は、採用をたいして頑張ってないということだと思います。
▼Runtripの「副業疑似体験」ができる記事
note.com
渋谷:耳が痛いです(笑)。
採用面接のポイントは「人選」
渋谷:先程、面接の回数を増やすというお話がありましたが、当時は面接や採用フローをマニュアル化されていたのでしょうか?
冨田:属人化を避けるために構造化面接を取り入れたり、面接官を務める方へのトレーニングを行ったりしていました。面接の回数を積んでいくと、面接官を務めるメンバーのスキルもある程度成熟するので、面接の回数も一定はこなしていただくようにしていました。
渋谷:採用面接への対応をしていくうちに、より自社のカルチャーへの理解が深まることもありますよね。
冨田:まさに仰るとおりだと思います。自分の言葉で会社の良いところを語ったり、会社に対する自分の思いを第三者に伝えたりする機会は、普通に仕事をしているとあまりないんですよね。なので、自社のカルチャーフィットしている貴重な人材を、可能な限り採用に駆り出して、色々な場で自社について語ってもらうことは、基本的にはポジティブに働くと思っています。
一方、会社に対してネガティブに思い始めてしまっているメンバーをそういった外向けの場に連れ出すと、自分が言っている外向けの言葉と実際の心象のギャップを直視することになってしまい、それでますます嫌になってしまい辞めたくなってしまう場合があります。そのため、人選はとても大事です。
渋谷:Flatt Securityさんでは、どのようなエンジニアが面接に出ていますか?
井手:採用候補者のポジションなどによって対応するメンバーが変わりますが、主にシニアエンジニア以上のメンバーに対応してもらうことが多いです。かなり幅広いメンバーに面接官を経験してもらっています。
先程冨田さんがお話していた、「外向けの言葉と心象のギャップ」という問題については、外向けに良いことばかりを言わないのも重要かなと思っています。可能な限り社内の良いところも、改善すべきところも素直に伝えるようにしているのですが、そういったポイントも重要なのかなと改めて感じました。
エンジニア評価はどのように設計している?
渋谷:Tebikiではメルカリの人事責任者の方にお手伝いいただき、メルカリが300人規模に到達するまで使われていた人事設計を導入しています。4つのバリュー×グレードという形での人事評価制度となっており、グレードのランクに応じて各バリューに対してどこまでのコミットメントを求めるかを明確化しています。評価がバリューに紐づいているので、否が応でもバリューを意識して行動していかなければいけない仕組みです。
Flatt Securityさんでは、カルチャーと人事評価をどう結びつけていますか?
井手:弊社では、バリューの体現度と業務のアウトプットという2軸を評価軸にしています。半期ごとに自分の成果をアピールできるタイミングがあるので、2軸それぞれでアピールしたい成果を書いてもらい、それを元に経営陣が判断する流れです。
渋谷:なるほど。そもそも、バリューを人事評価に直結させることは良いことなのでしょうか?冨田さんのご意見をぜひ伺いたいです。
冨田:人事評価はビジネス組織における永遠の課題ですよね。
個々人の能力とパフォーマンスは定量・定性の両面で測りやすいので、昔からそれらが評価軸として使われてきたわけですが、それだけだと組織に対する貢献度合いを正しく評価することができません。そのギャップを埋めるために360度評価や、バリューの体現度を組み込む形の評価など、様々な形の評価制度が出てきているのだと思います。
時間をかけようとすれば、いくらでもかけられてしまうのが人事評価です。時間をかければかけるほど、「正しい評価」にはつながりますが、コストパフォーマンスの面から問題があります。バリューはその会社のカルチャーの氷山の一角に過ぎませんが、あえてその一部を使うことで、簡易的にカルチャーへの貢献を評価に組み込むというのは、とてもリーズナブルで良いのではと思います。
人事評価結果のフィードバックの難しさ
井手:ちなみにTebikiさんでは人事評価にどのぐらいの工数をかけていますか?
渋谷:弊社では半期に1度のペースで人事評価を実施しているのですが、いつも2週間ぐらいかかってしまいますね。評価をするだけでなく、評価をフィードバックしていくことがとても重要だと考えているのですが、フィードバックを言語化するのが難しいんですよね。
メンバー一人ひとりを弊社のカルチャーに寄り添う形で導いてあげたいので、個々人の能力やパフォーマンスだけを評価するだけでなく、どのバリューに基づいてどう行動した結果に対して、どう評価するのかを、納得感を持ってもらえるような形で言語化できるよう考えています。
井手さんは人事評価周りで何か課題感をお持ちだったりしますか?
井手:現行の人事評価制度を作った時期は、どちらかというと事業成長に重きを置きたいと考えていたタイミングだったので、現行の人事評価制度自体の見直しを検討しています。人事評価は、評価後のフィードバックと本人の納得度が全てで、絶対的な正解はないのではないかと思っています。
なので、工数的にもかなりシンプルにしています。被評価者にはアピールの機会を与えていますが、たくさんアピールしたい人は時間をかけてアピールできますし、逆にあまりアピールしたくない/不要と思う人は時間をかけずに済むような仕組みです。
渋谷:弊社が今の人事評価制度に移行して良かったのは、採用面にも効いているところです。俗な言い方をすれば「バリューを体現すれば出世できる」という仕組みなので、採用面接時に採用候補者に対してバリューの意義や内容を説明しやすくなりました。
井手:弊社では経営陣全員が評価者になる仕組みなのですが、Tebikiさんではどのような方が評価者を務めていますか?
渋谷:評価を2段階で設定しており、1次評価者は被評価者の上長、2次評価者は役員・部長クラスのメンバーが務めています。最終的な評価は経営陣含めて議論し決定しています。
井手:メンバーがどれだけバリューに沿った行動をしているか、どれだけ体現しているかを定量的に示すのは難しいですよね。評価の判断基準となるファクトを集める仕組みはありますか?
渋谷:1on1のタイミングで各メンバーに話を聞くようにしています。1on1は毎月実施しているので、半期ごとの評価より前のタイミングで話をするように心がけています。日頃から意識しておかないと、評価のタイミングで思い出すのが難しいですね。
会社のバリューの見直し、理想的な頻度は?
渋谷:冒頭の井手さんのお話の中で、「5つのバリューのうち3つを途中から追加した」というお話がありましたが、どのような経緯で追加することになったのですか?
井手:2019年の創業時に定めたバリューは、「こういう人を評価したい」という軸で3つのフレーズを定めていました。
バリューはしばしば抽象度が高くなってしまいがちです。そのため、同じフレーズでも人によって解釈が分かれてしまうことが課題だと感じていました。例えば、以前「オーナーであれ」というバリューがあったのですが、これについても「オーナーシップを持っている」という状態がどういうことを指すのか、経営陣の想定とメンバーの解釈の間にズレが生じてしまったことがありました。
また、会社が成長を遂げフェーズが変わる中、会社として重視したい考えとのズレも感じるようになってきました。バリューを設定した時期は、本当にゼロイチで事業を立ち上げたタイミングだったのですが、事業が軌道に乗り始め、組織や事業の拡大を進めていくタイミングに差し掛かっていたのです。
こういった状況を踏まえ、解釈が揺れていたり整合性が取れてなかったりするバリューを見直し、会社の現況に沿った、メンバー一人ひとりが理解しやすいバリューの再構築に取りかかることにしました。2021年の年末から2022年の年初にかけて取り組んだので、初めてバリューを設定してから3年で改定したことになります。
渋谷:バリューを最初に作ってから、比較的短いスパンで改定されたんですね。弊社では今のところバリューの見直しは検討していなかったのですが、バリューの見直しはどのような頻度で取り組むべきなのでしょうか?
冨田:これも正解はなく、その会社によりますね。著書でも書きましたし、先程井手さんも仰っていましたが、会社も生き物なので、フェーズが変わればその会社が大切にするもの/大切にすべきものも変わってきます。例えば、小規模なスタートアップでは、経営陣が1人変わるだけで、会社のカルチャーや日々の行動規範がガラッと変わってしまいます。
ただ、バリューを一回掲げてしまうと変えづらいというのも事実です。全体を見直すのはハイカロリーなので、形骸化してしまっていそうなフレーズだけ、その都度クイックに見直していけるのが理想です。
会社のフェーズやサイズによっては変える必要がない場合もあると思いますし、事業のピボットを経て組織が一新されたような会社の場合は、組織や事業の変化にあわせて高頻度で見直していかないと整合性が取れなくなってきます。本当にケースバイケースですね。ただ、会社の実情に合っていないバリューを掲げ続けることが一番良くないのは間違いありません。
渋谷:冨田さんの著書でも「バリューが曖昧になったら考え直そう」ということが書かれていましたが、井手さんの話に通じるところがありますね。
冨田:そうですね。解釈の余地がないものを作ろうとすると、相当細かい内容になってしまうので、あまり現実的ではありませんよね。解釈の余地が一定あるバリューを設定したとしても、会社の中でその解釈について議論が起こるのは会社にとってポジティブなことです。経営陣や人事サイドとしても、バリューの解釈についての議論はある程度許容しておいた方が良いと感じています。
渋谷:これは「ミッション・ビジョン・バリューあるある」だと思うのですが、粒度をどう設定するかは難しいところですよね。それぞれの粒度は揃っていた方が良いのでしょうか?
冨田:粒度よりは、実際にどう使っていくかが大事なのではないかと思っています。弊社のバリューは7つあります。その中でも特にユニークなのが「ユーモア」です。「ユーモア」は解釈の仕方がいくらでもあると思うのですが、その解釈を議論すること自体が会社として健全なあり方だと思っています。
▼Runtripのバリュー解説記事
note.com
渋谷:バリューが7つあるんですね。結構な数だと思いますが、どのように決定されていったのですか?
冨田:創業当時、当時の経営陣でパッと決めたようです。現状の組織にもフィットしているので、使い続けています。メルカリさんのバリューの中で「Go Bold」だけが際立っているように、弊社のバリューの中でも高頻度で使われるものと、そうでないものが存在します。濃淡はあって然るべきかなと思います。
渋谷:バリューが1ワードで完結しているのも特徴的ですよね。
冨田:弊社は、趣味で週に1度走るランナーから、世界記録を狙うシリアスランナーまで、あらゆる属性のランナーを肯定し続けたいと考えています。世界をランニングワールドにすることを目指している私たちからすると、ポジティブで、ユーモアがあって、ホスピタリティがある…といったバリューに書かれているような性根の部分がとても重要だと認識しています。そのため、1ワードで、スッと頭に入ってくるフレーズを大切にしています。
各社で一番使われているバリューのフレーズは?
渋谷:Flatt Securityさんで一番使われているのはどのフレーズでしょうか?やはり「倫理的であれ」でしょうか。
井手:「倫理的であれ」はかなり浸透していますね。逆に倫理的でないと思ったことに対しては、Slackで「No倫理」という絵文字でリアクションするような習慣が定着しています。メンバー個々人の価値判断や行動基準になってきているような印象を受けています。
渋谷:「Go Bold」と同じくらい「No倫理」もキャッチーですね(笑)。
井手:何が倫理的かということに対しても解釈の余地はたくさんあると思いますが、メンバーの中である程度共通認識が出来てきたように感じています。弊社のカルチャーとも言えるかもしれません。
冨田:セキュリティという事業フィールドにいらっしゃるからこそ「倫理的であれ」というバリューを設定されたとお話されていましたが、事業戦略上、とても納得感を持って受け止められますよね。同業他社があまり掲げていない、レアなバリューでもあると思うので、個人的にも好感度が高かったです。
井手:ありがとうございます。セキュリティ分野は複雑な商材が多く、お客様に理解していただけるためにも丁寧なコミュニケーションが必要です。中には、リスクを強調して、恐怖心や不安感を煽るようなメッセージを発信することで、商材を売り込もうとしているような会社もあります。正しくリスクを伝えるのは大事なことですが、過度に恐怖心や不安感を煽るような言動は、弊社では「No倫理」と捉えています。この考え方はとても大切にしていますし、だからこそ「倫理的であれ」をバリューの一番目に掲げています。
冨田:その考えを会社全体で貫かれているんですね。今の話はとてもエモかったです。
井手:実は、僕たちの反省を込めて作られたバリューでもあるんですよね。創業最初期に、今振り返るとやらない方が良かった施策が1つあって、それに対する反省の思いを込めています。
渋谷:Flatt Securityさんのサービス群も「倫理的であれ」を世の中に広めていく存在だという見方もできますよね。
井手:そうですね。Tebikiさんのバリューの中で一番使われているのは、どのフレーズですか?
渋谷:「決めたらやり抜く」はCEOが個人的にも重視しているフレーズなので、目にする機会は多いですが、最近では「ユーザーの行動が全て」がチーム内で浸透しているように感じます。セールスがユーザーの声を社内に届けてくれたり、スクラム開発におけるスプリントレビューに社内メンバーを巻き込んだりするなど、ユーザーの構造を社内に共有する場を、意識的に作るカルチャーが生まれています。
失敗を通じて痛感したミドルレイヤーの重要性
渋谷:冨田さんは著書『企業文化をデザインする』を出版されましたが、出版後、社内でもカルチャーへの注目度は上がりましたか?
冨田:出版後、反響を受けて社内でカルチャー勉強会を開催しました。普段そのようなことはあまりやってはいないのですが(笑)。
良いカルチャーを作るには、経営陣の行動が全てだと、自戒の意味も込めて感じています。組織の構造の中で、上に立つ人間がどれだけ背中で見せられるかというところにかなりの比重がかかっていると思います。経営陣がカルチャー作りを自分ごととして捉えて、日々の行動で見せ続けていければ、私たちの組織規模ではスケールします。次は、ミドルレイヤーをいかにたくさん作るかにフォーカスして取り組んでいくつもりです。
渋谷:『企業文化をデザインする』を読めば読むほど、ミドルレイヤーの重要性を痛感しました。経営陣だけが行動すれば良いという話ではないですよね。
冨田:そうなんですよ。スマートニュースの組織規模が50人から100人に拡大する時も、わかっていてもつまずいてしまいました。ミドルレイヤーの採用と育成がしきれなかったのは、今でも悔やまれる反省点ですね。
渋谷:スマートニュース時代、具体的にはどのような課題が発生していましたか?
冨田:まず、経営陣と現場の乖離が起きました。組織規模的に「会社のカルチャーは経営陣が背中で見せれば良い」というのが通用しなくなっていたので、経営陣と現場を行動でも言葉でも仲介し、カルチャーを浸透させるミドルレイヤーの必要性を痛感しました。それを明確に役割に入れた形で、ミドルレイヤーに行動してもらわないと、組織の健全化が達成できないですね。
▼冨田さんが振り返る、スマートニュース創業期のカルチャー
note.com
渋谷:弊社でも、ミドルレイヤーの採用は非常に難しいと感じています。Flatt Securityのエンジニア組織は、キレイなピラミッド型になっていますか?
井手:これからまさに「30人の壁」や「50人の壁」にぶち当たりそうな状況なので、弊社でもミドルレイヤーの採用・育成が急務になっています。現状はかなりフラットな組織になっています。
弊社では「バディ制度」を設けており、上下関係によらないメンバー間のつながりを作っています。バディ同士で1on1を定期的に実施し、目標設定やキャリア相談などをしてもらうようにしています。
エンジニアの方の中には、いわゆる「マネジメント」を好まない方もいらっしゃいます。自分から進んでマネジメントを担当したいと考える方は少数派なのではないでしょうか。ミドルレイヤーを増やしたいという思いはありますが、メンバー個々人に対する「管理」をするマネージャー的な役割ではなく、メンバー個々人が成果を出すためのサポートをする役割を担える人をこれから増やしていきたいと思っています。
渋谷:大手テック企業の中には組織構造が完全にフラットな企業もあったように記憶しています。
冨田:ゼロではないですよね。組織構造も会社によって濃淡が異なり、様々なものがありますが、やはり最もメジャーなのはヒエラルキー型の組織だと思います。ほとんどの組織はミドルレイヤーを置かないと、上手く回りません。
気合を入れて、奇をてらった組織構造を実現したい人はもちろんチャレンジすれば良いと思いますが、組織作りでつまずきたくないのであれば、上下構造に基づいた直球ど真ん中の組織作りをしていくのが良いのではないかと私は思っています。
井手:弊社はまだ30人程度の組織ですが、経営合宿で決めたことをスライドにまとめて社内に話しても、メンバー全員がスッと理解してくれるわけではないんですよね。その背景には、僕の伝え方や表現など、色々な要因があるのかもしれませんが。
メンバーが会社の方針やカルチャーに疑問を持った時に、経営陣との間に立って説明してくれる人はどうしても必要だと感じています。ピラミッドの組織にせず、フラットな組織になった場合も、自然とそのような役割の人は求められてくると思います。
冨田:仰る通りですね。組織は生き物なので、一定規模を超えると、カバーしきれないグレーゾーンが生まれてきてしまいます。そこを積極的に、会社全体があるべき姿に沿うようにデザインし続けていくためには、健全なカルチャーを組織の末端まで浸透させておくことが重要になってきます。
これからのエンジニア組織づくりに込める想い
渋谷:最後に、これからのエンジニア組織づくり、あるいは組織づくりそのものに込める想いについてお伺いできればと思います。冨田さんからお願いしてもよろしいでしょうか。
冨田:私は現在Runtripという会社にコミットさせていただいていますが、今回このように著書も出版させていただいて、私なりに社会に対して小さな恩返しができたのかなと思っています。
前職のスマートニュースで初めて人事になって、組織づくりに向き合いました。中にはメンタルを崩してしまう方などもいて、色々な人を見る中で「一人ひとりが自分に合った組織で生き生きと働ける社会になってほしい」という思いを持ちました。人生の中で仕事をする時間はかなり長いので、折角なら生き生きと働ける環境が良いですよね。
そういった観点から、カルチャーを正しく理解し、正しく社外に発信し、それに呼応するような形で、カルチャーにフィットした人が入社してくれることで、社内のメンバーが楽しくエネルギッシュに働ける会社が実現するのではないかと考えました。そういった会社ばかりになると、日本だけではなく、世界中がもっともっと幸せになると思いますし、人類全体が正しい方向に向かうと信じています。
仕事を通じて嫌な思いをする人や、仕事を通じてメンタルを崩してしまう人を生んでしまう組織が、1つでもなくなれば良いなと思っています。会社は他人の集合体なので、メンバーのバックグラウンドや価値観も異なり、大変なことも多いとは思いますが、自社組織を含め世界中の組織をより良くしていきたいです。ミッション・ビジョン・バリューに共感できて、さらに長い間一緒に同じ目標に向けて走り続けていける仲間を見つけられるかどうかは、人生においてとても重要なことです。
私はRuntripを世界で一番ポジティブでエネルギッシュなチームにしていきたいと思っていますし、世の中においてそういったチームがもっともっと増えていければ嬉しいなと思います。
渋谷:ありがとうございます。続いて、井手さんからもお願いします。
井手:Flatt Securityは僕の「1兆円企業を創りたい」という思いから始まった会社です。1兆円企業になるためには、30人の壁や50人の壁よりももっと大きな壁があると思っているので、組織づくりには今後さらに注力していきたいと思っています。もちろん、組織づくりを人事の方に任せきりにするのではなく、自分ごととしてコミットしていくつもりです。
弊社はプロフェッショナルサービス事業という人月のサービスと、プロダクト事業の2つの事業を展開しています。かなり性質として相反する事業・組織を2つ抱えている状況です。事業の性質や評価軸の異なるメンバーが1つの会社に集まっています。
メルカリさんとメルペイさんが分社化したように、通常は性質の異なる事業を別会社として分けることが多いと思うのですが、弊社の事業は相互に関連し合っていて、切っても切り離せない関係になっています。カルチャーや評価を事業ごとに完全に切り離すには、事業ごとにバリューを作っていくなど、かなり難易度の高い作業が求められます。今後、事業と組織をどうしていくべきか、はっきりとした答えは見えてはいないのですが、そのあたりは色々な方の知見を伺いながら頑張って検討していきたいと考えています。
渋谷:ありがとうございます。とても難しい課題ですが、そういった難易度の高いデザインが求められる局面だからこそ、やりがいがあり、組織のデザインが楽しく感じられそうですね。
現時点で、弊社で働いているエンジニアは全員僕が採用しています。僕も冨田さんと同じで、チームで働くからにはみんなに幸せになってほしいと考えています。今後も、カルチャーをスケールできる組織にしていきたいと思います。
(取材・文/寺山ひかり)
お知らせ
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<目次>
序章 企業カルチャー(企業文化)という無形資産の衝撃
第1章 なぜ「企業カルチャー」は大切なのか?
第2章 企業カルチャーを知る前に知るべきこと
第3章 宗教から学ぶカルチャーデザイン
第4章 実例から学ぶカルチャーデザイン
第5章 カルチャーデザインのポイント
第6章 カルチャーデザイン要件
第7章 感情エネルギーこそカルチャーの源泉
第8章 終わりなきカルチャーデザインの実情
第9章 カルチャーをデザインするリーダーシップ
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