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エンジニア人気企業3社に聞く!新卒エンジニア採用の裏側【サイバーエージェント×サイボウズ×pixiv】



株式会社サイバーエージェント、サイボウズ株式会社、ピクシブ株式会社の3社の新卒エンジニア採用・育成担当者の皆様に、新卒エンジニア採用・研修の取り組みや裏話を教えていただきました。今回は各社の新卒エンジニア採用にフォーカスしてお届けします!

<各社の新卒エンジニア研修の取り組みについて聞いた後編はこちら>
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プロフィール



株式会社サイバーエージェント 技術人事本部長 峰岸啓人さん(@mine_roto
2012年、エンジニアとして株式会社サイバーエージェントに入社。コミュニティサービスの新規開発、運用を経験して、2016年にエンジニアの新卒採用人事へ。 現在は技術人事本部というエンジニアのための全社の人事組織の本部長として、採用から育成を始めとする人事領域全般に従事。




サイボウズ株式会社 人事本部 Recruiting & Onboarding部 新卒採用チーム 兼 開発本部 People Experience エンジニア採用チーム 岡田陸さん(@tibitaazsa

2020年4月にサイボウズに新卒で入社。新卒採用チームに配属後2022年8月から新卒キャリアを横断して採用を行なっている。



サイボウズ株式会社 開発本部 People Experience オンボーディングチーム 久宗大雅さん(@tignyax

2014年にサイボウズに新卒入社。インフラエンジニア/SREを経験した後、2018年に技術ブランディング/関係性づくりなどを生業とするチームへ異動し、技術広報やチームビルディングを実施。2021年にオンボーディングチームへ異動。エンジニアリング組織が強くなるための支援を行っている。




ピクシブ株式会社 技術開発本部 インフラ部 西山慶一郎さん

2019年、アルバイトとしてピクシブ株式会社に入社。バックエンドエンジニアとして活動した後、2020年に同社へ新卒入社。主に、インフラエンジニアとして活動するとともに、横断組織として、CSIRTと新卒エンジニア採用チームを兼任。


技術が好きな学生たちとの接点を増やすための工夫

ーー皆様の現在のお仕事について教えていただいてもよろしいでしょうか。

ピクシブ 西山さん(以下、西山):僕は、ピクシブの技術開発本部の中にあるインフラ部という部署に所属しています。普段はエンジニアとして働いているのですが、新卒エンジニア採用や研修にも関わっています。セキュリティのグループにも兼務の形で所属しているため、新卒エンジニア研修においてはセキュリティ研修をメインで担当しています。

サイボウズ 久宗さん(以下、久宗):私は、サイボウズの開発本部の中にあるPeople Experienceチームのオンボーディングサブチームに所属しています。People Experienceチームでは、エンジニアの採用から退職までを扱っているのですが、オンボーディングサブチームでは主に入社したエンジニアのオンボーディング部分を担当しています。

サイボウズ 岡田さん(以下、岡田):サイボウズの人事本部の新卒採用チームと、People Experienceチームの中のエンジニア採用チームを兼務しています。新卒採用チームの中では、主にエンジニア採用を担当しています。People Experienceチームと兼務しているので、オンボーディング担当への引き継ぎなども行っています。

サイバーエージェント 峰岸さん(以下、峰岸):2012年にサイバーエージェントへエンジニアとして入社して、4年ほどエンジニアとしてサービス開発・運用を担当した後、2016年から今に至るまでエンジニアの人事全般を担当しています。現在、エンジニア専門の人事組織である技術人事本部の責任者を務めており、エンジニアの採用から育成、人事戦略まで、エンジニアに関わる人事領域を全般的に見ています。



ーー各社の新卒エンジニア採用の取り組みについて教えてください。

岡田:サイボウズでは、新卒エンジニアの採用規模は毎年15名程度ですね。インターンシップ期と本選考期の2つの期間に分けて考えているのですが、採用人数はそれぞれの時期でほぼ半数ずつといった感じです。現場のエンジニアメンバーと連携しながら採用を進めることは常に意識しています。

これまでの新卒エンジニア採用では「エンジニア」という単一の職種でのみ募集をかけていました。2024卒からは、入社後のミスマッチができるだけ生じないよう、「フロントエンドエンジニア」、「バックエンドエンジニア」「クラウド基盤エンジニア」「プロダクトセキュリティエンジニア」のように職能まで決めた形でオファーをする方針に変更しました。

数年前から拠点採用や拠点配属を行っています。エンジニアの場合、自宅からのリモート勤務が可能なので、「居住地にかかわらず希望する国内拠点で働きたい」というニーズがありました。サイボウズの国内拠点は現在10箇所あるのですが、応募者が各拠点への配属を希望する場合は、その希望を考慮する形で採用を進めています。



西山:ピクシブでは、毎年新卒エンジニアを10〜20名程度採用しています。弊社の事業領域はかなり特殊で、今回の取材に出席されている2社さんと比べると「狭いけど深い」領域なのではないかと考えています。そのため、そういったニッチな領域が好きな学生や、そのような領域への理解が深い学生との出会いができるよう注力しています。

インターンシップは夏と春の年2回、「季節インターンシップ」という形で定期的に開催しており、インターンシップへの参加がきっかけで入社する新卒エンジニアも少なくありません。インターンシップ参加後、会社に興味を持っていただいた方には、アルバイトや長期インターンシップなどをご紹介したり、選考参加に向けてやり取りを進めていったりするような流れが多いと思います。

また、様々な高専・大学の技術系サークルやプログラミングが好きな学生たちと一緒にイベントを開催したり、そのような学生サークルなどがイベントを開催する際にスポンサーとして支援したりする活動も行っています。例えば、学生向けのテックイベント「pixivスピードアップチャレンジ」を学生団体と一緒に企画・開催したり、学生サークルがLT大会を主催する際に飲食費を負担したり、といった形です。イベントの共催やサポートを通じて、弊社のエンジニアと色々な学校・学生の方々との接点が増えているように感じます。

ピクシブが学生向けに開催したイベント「pixivスピードアップチャレンジ」。当日は東京工業大学デジタル創作同好会traPに所属する24名の学生が参加した。

▼ピクシブが学生向けに開催したイベント「pixivスピードアップチャレンジ」のレポート

inside.pixiv.blog
直近では、RubyKaigi2023に学生エンジニアを招待する企画を実施しました。選考を通過した学生エンジニアの方のRubyKaigiの参加費と会場までの旅費・宿泊費をピクシブが負担するという企画です。

▼RubyKaigi2023への学生エンジニア招待企画

inside.pixiv.blog

イベントの共催や後援をする学生サークルや団体などについては、OB・OGの弊社エンジニアから紹介してもらうケースが多いですが、社内のエンジニアから「今度この団体が面白そうなイベントをやるみたいだよ」という感じで情報提供してもらうこともあります。日常的にTwitterで情報収集するのが好きなエンジニアが多く、エンジニアから教えてもらえるイベント情報は、学生の方々との新しい繋がりを作っていく上で非常に参考になっています。



峰岸:サイバーエージェントに今年の春入社した23卒エンジニアは合計111名でした。新卒エンジニアの採用は今後も拡大していく予定で、24卒エンジニアの採用目標は150名です。昨年から本選考の開始時期を早めて、本選考開始後は通年で採用を行っています。

インターンシップは学年不問で参加できる仕組みにしているので、毎年大学1・2年生で参加される方がいらっしゃいます。早い時期から会社に興味を持ってくださっている方の割合が高いというのは1つの特徴かもしれません。

一方で、弊社のように100名規模の採用ということになると、インターンシップ経由の採用の割合は相対的に減ってきます。新卒エンジニアのうち、インターンシップに参加していたのは半数ほどで、残りの半分は自然流入による採用です。

自然流入による採用のパイを増やすために、多角的に技術イベントを行ったり、オウンドメディア技術ブログを活用した採用広報に力を入れています。新卒採用を意識した学生向けのコンテンツから、広く技術者を対象としたコンテンツまで、コンテンツごとにターゲットを変えてアプローチしています。オウンドメディアでは、様々な社員へのインタビューやサービスの解説などを中心に掲載しており、技術ブログでは技術トピックやトレンドなどの解説を中心に掲載しています。

学生に向けて情報発信するメディアとして、今年からエンジニア採用広報noteを活用し始めました。オウンドメディアや技術ブログよりカジュアルな形で、社内カルチャーに関する発信をしています。例えば、入社前の不安を解消する「内定者同士の繋がり」や「入社前の過ごし方」に関する記事や、社内で開催したフットサル交流会やワールドカップ観戦の様子を伝える記事などをこれまで掲載してきました。

学生に向けて社内カルチャーを中心に発信している、サイバーエージェントのエンジニア採用広報note


ーーサイバーエージェントでは、ターゲットや目的ごとに、多様なメディアを展開されているんですね。メディアの企画や運用はそれぞれどのような体制で行っていますか?

峰岸:オウンドメディアの企画は、基本的に全社広報が取りまとめていて、各事業部の発信したい内容をキャッチアップしてコンテンツに落とし込んでいます。そのため、採用に関するコンテンツの場合は、採用担当が企画に関わることもあります。

技術ブログは、DevelopersDeskというエンジニア主体の組織が企画・運営を行っています。DevelopersDeskとは、エンジニアたちが情報発信戦略やコンテンツの質を高めていくための手法などを考え、実行するための組織で、2年程前に作られました。私たちエンジニア採用担当や広報担当がフォローに入って、企画を一緒に考えて行くこともあります。

エンジニア採用広報noteは、私の所属する技術人事本部の中にある広報チームのメンバーが企画・運営を行っています。

履歴書不要の選考を実現した狙い

ーー選考では、どのようなポイントを重視していますか?

西山:ピクシブでは、技術力の高さとカルチャーマッチの度合いを意識して見るようにしています。

弊社の新卒エンジニア採用では、基本的に履歴書やエントリーシートの提出が不要で、今まで情熱を注いでいたものや自慢できる成果物を提出していただいています。TwitterやGitHubのアカウントなども対象になっています。これは、選考の全ての過程に現場のエンジニアが関わるためです。書類審査や面接は、現場で働くエンジニアが行い、合否判断は自分も含めたエンジニア採用チームが行っており、エンジニア採用チームは全員、普段エンジニアとして働きながら、採用活動にも携わるメンバーで構成されています。

応募者の技術力については、GitHubの内容やGitHubに掲載されているブログなどのリンクから推測できますし、Twitterの投稿を見ればカルチャーマッチの度合いを図ることができます。

住所など、応募者の基本情報は別途フォームで回答してもらっていますが、その内容が合否に影響することはほぼありません。



ーーTwitterとGitHubだけでエントリーできる仕組みは凄いですね!サイバーエージェントさん、サイボウズさんはどのように応募者の技術力やカルチャーマッチの度合いを測っていますか?

岡田:サイボウズでは、選考の中で判断していますね。新卒エンジニア採用では、技術課題を解いてもらうことはしていないのですが、面接で過去の成果物や「これまで技術的にこだわってきたこと」「これまでどのような問題解決に関わってきたか」などを聞くことで、応募者の技術力や技術選定に必要な思考力を測っています。

カルチャーマッチについても同様です。弊社はチーム開発がメインとなっている会社なので、面接でのやり取りを通じて「議論に入ってもらえそうか」「一緒にコミュニケーションを取りながら開発できそうか」といったポイントをチェックしています。

GitHubアカウントは、応募時に記載のあった方のみ確認しています。面接で、GitHubの内容を応募者の方と一緒に見ながら「一番苦労したポイントはどこでしたか?」「ここはどうしてこの書き方をしているのですか?」などと質問させていただくことはあります。Twitterに関しては、現時点ではチェックしていません。



峰岸:応募者の方のカルチャーマッチに関しては、かなり力を入れてチェックするようにしています。サイバーエージェントでは、新卒入社したエンジニアのミスマッチが課題になっていた時期があり、役員からも「新卒エンジニアのミスマッチをゼロにせよ」という強いオーダーがありました。

ミスマッチの解消のために、弊社で活躍している人材の共通点をリスト化し、選考基準とすることを決めました。まず、外部のコンサルティングの方に入っていただいて、弊社で活躍する人材の特徴をリストアップしていただきました。例えば、「諦めずに最後までやり遂げられる」「技術に対する好奇心」などの項目です。作業を始めてから、選考基準が完成するまで数ヶ月ほどかかりました。そして、「どの選考ステップにおいても、選考基準をクリアできなかった場合はお見送りにする」という運用ルールを定めて、活用を始めました。当時、僕は新卒採用の責任者を務めていたのですが、全ての応募者の方々の役員面接に必ず同席して、その応募者の方が選考基準をクリアしているかどうかを見極めていました。

この取り組みを始めてから、カルチャーミスマッチを理由に退職される方が減り、離職率も下がりました。また、事業部から「この人はマッチしていないかもしれない」という相談を受ける機会も少なくなってきたように思います。幅広く事業をやってるからこそのスキル面での要望は一定はあるものの、「コミュニケーションやキャリアの志向性といった面で入社当初からギャップを感じる」という例はほとんどなくなりました。

技術力に関しては、エントリーシートでGitHubアカウントを記載いただくようにしているので、GitHubはチェックしています。2018卒採用までは、選考の中で技術課題やコーディングテストなどを行っていましたが、「足下の技術力を評価するだけでなく、これからの伸びしろも評価したほうがサイバーエージェントらしいのではないか」という考えから、実施するのをやめました。面接の各ステップの中にエンジニア面接、エンジニア責任者面接をそれぞれ必ず入れるようにしているので、それらの面接の中で技術力を測っています。

入社前の不安解消、各社の対応方法は?

ーー内定〜入社までの期間、新卒エンジニアの方たちに対するフォローとして、どのようなことをされていますか?

岡田:サイボウズでは、入社前の期間、自社の業務効率化プラットフォーム「kintone」を内定者に提供しています。自己紹介を登録してコミュニケーションを取ってもらったり、入社前の不安や趣味について話すスレッドでお互いの理解を深めてもらったりしています。

サイボウズが提供する業務効率化プラットフォーム「kintone」は、採用管理における活用事例も増えているという


西山:ピクシブの内定者は、新卒入社前にアルバイトとして入社してくださるケースが多いので、一緒に仕事をしながらフォローを行っています。アルバイトとして入社されない方に対しても、メールやSlackなどで定期的にコミュニケーションを取るようにしています。

定期的に接点を作っていくために、弊社主催のカンファレンスに招待したり、学生と一緒に共催するイベントや後援するイベントに参加してもらったりすることで、対面でのコミュニケーションの機会もなるべく作るようにしています。



峰岸:サイバーエージェントの場合、内定承諾をしてくださった方はSlackに招待しています。人事側では自己紹介チャンネルのみを作成し、内定者が作りたいチャンネルを自由に作成できるようにしています。

弊社がエンジニアに求めている能力の1つに「オーナーシップ」があります。内定者期間中からオーナーシップを培ってもらうために、入社までに内定者だけでプロジェクトを立ち上げて、内定者同士で企画や調整などを行ってもらっています。プロジェクトの内容には特に縛りはありません。

例えば、毎年実施されている「内定者LT」では、人事担当は内定者にZoomを提供するだけで、企画や進行などは全て内定者が行っています。先日入社した23卒の方々は、入社数日前に顔合わせ会を開催していました。会社のカフェスペースに、80名ほどが集まったと聞いています。もちろん、企画やコンテンツなどは全て23卒の方たちが考えています。

▼23卒の内定者LTの様子
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企画立案の参考にしてもらうために、人事から過去のプロジェクトの例を紹介することはありますが、基本的には内定者の方たちに、「なぜそのプロジェクトをやるのか」という目的から考えてもらい、メンバーの役割分担や実現に向けた調整などを進めてもらいます。プロジェクトの必要経費は全額会社が負担しています。

ピクシブさんと同様、弊社でも内定後、アルバイトとして入社される方は一定いらっしゃいますが、会社として内定者個々人に対してフォローするというよりは、内定者同士の繋がりに対してフォローする姿勢が強いかなと感じています。

(取材・文/寺山ひかり)

<新卒エンジニア研修についてお話を伺った後編はこちら>

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